Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error.
(In Tokyo)

Sixte Kakinda, Kei Ito, Layla Yamamoto and Souya Handa

Aug 5 - 15, 19, 20, 2023
(※7日, 8日, 14日, 16-18日休廊)
(平日)15:00 - 19:00、(土日祝)13:00 - 19:00
※8月5日は18時オープン

「シノチカ」(シノバズブルワリー地下一階)
(東京都台東区上野2丁目10−7 かきくけこビルB1 (シノバズブルワリー地下1階))

Curated by Souya Handa
Produced by SOUYA HANDA PROJECTS

《アーカイブ・展示作品解説はこちら》


【お知らせ】
好評につき、本展会期を延長することとなりました。
8月19日(土)・20日(日)13:00 - 19:00でオープンいたします。
当初の会期中の来訪が難しかった方も、また二度目・三度目のご来訪の方もぜひともお越しいただけたらと思います。


<展示概要>

■展覧会名:Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error. (In Tokyo)

■アーティスト:シクステ・カキンダ、伊東慧、山本れいら、半田颯哉

■キュレーター:半田 颯哉

■会場:シノチカ

(東京都台東区上野2丁目10−7 かきくけこビルB1 (シノバズブルワリー地下1階))

■会期:2023年8月5日 - 15日, 19日, 20日(会期追加)(※7日, 8日, 14日休廊

■開場時間:(平日)15:00 - 19:00、(土日祝)13:00 - 19:00 ※8月5日は18時オープン

■入場料:入場無料

■主催:合同会社Souya Handa Projects

■企画協力:タメンタイ

■協力:香老舗 松栄堂、株式会社ミマキエンジニアリング、ナオライ株式会社、シノバズブルワリー、藝育会


※8月5日18:00 - 21:00にオープニングレセプションを開催いたします。

Souya Handa Projectsは、シクステ・カキンダ、伊東慧、山本れいら、半田颯哉の4人の現代アーティストによるグループ展「Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error. (In Tokyo)」を新たなアートスペース、「シノチカ」(シノバズブルワリー地下一階)にて開催いたします(キュレーション:半田颯哉)。本展は、第47回G7広島サミットの開催に合わせて広島で開催された展示を、内容をアップデートして東京で開催するものです。

本展を主催するのは、広島出身のアーティスト・インディペンデントキュレーターである半田颯哉が主宰するSouya Handa Projectsです。
会場は上野周辺の商店を中心にアーティストと街を繋ぐ活動をしている藝育会(藝を育むまち同好会)の仲立ちのもと、シノバズブルワリーの協力により「シノチカ」での開催となります。
一部作品については、香老舗松栄堂の協力によりお香が使用されています。
また、一部作品の印刷については株式会社ミマキエンジニアリングの協力によって実現されています。
加えて、オープニングレセプションでは広島を拠点とするナオライ株式会社の協力により、日本酒を蒸留されて作られた新しいお酒、「浄酎」が提供されます。

もともとG7広島サミットの開催に合わせて企画されたこの展示は、「なぜ世界中から広島に人が訪れるのか」ということに焦点を当てており、広島で起きた過去のことを、現代を生きる私たちはなぜ学びに行く必要があるのかという命題を展示の起点としていました。
東京で開催される本展では、更に、なぜ広島のことを語り継ぎ、広めていく必要があるのかという命題にも向き合うこととなります。

本展のキュレーターである半田颯哉は、まず「なぜ世界中から広島に人が訪れるのか」という問いに対しては、「広島で見て、聞いて、知ったことをそれぞれが持ち帰り、そしてそれを活かして平和な未来を一緒に作っていくため」と答えます。そして、続く問いに対しての回答は、「『ヒロシマ』を忘却した先に訪れうる未来を回避するため」とし、リアリズムの名において核兵器の保持・使用が正当化されうる時代の空気への抵抗を示します。

しかし一方で、被爆者の声を直接聞くことがどんどんと難しくなっていきつつある今、「ヒロシマ」を考える方法もまた新たな形を模索していく必要があるのではないでしょうか。本展においては、「ヒロシマ」の前と後——広島に投下された原爆に使用されたウランの採掘されたコンゴと、第二次大戦後のアメリカの核兵器実験による被爆被害を繋げ、歴史上の特異点としての「ヒロシマ」ではなく、「ヒロシマ」に/から繋がる連続した歴史を紡いでいきます。これは、「ヒロシマ」を語り継いでいくための方法を探るための試みでもあるのです。

シクステ・カキンダは、アフリカ人アーティストとして初めて東京藝術大学で修士号を、同大学で今年博士号を取得した、コンゴ民主共和国出身のアーティストです。本展ではカキンダの故郷であるコンゴと広島の関係に焦点を当てた作品を展示します。コンゴにはシンコロブエ鉱山と呼ばれるウラン鉱山があり、広島に投下された原爆は当時のベルギー領コンゴから産出されたものが使用されていました。カキンダはこのプロジェクトによって、コンゴと広島の見えない繋がりを示し、そして断絶されていた2つの土地の歴史をアーティストの身体によって橋渡しします。

半田颯哉は18歳まで広島で育ち、現在は東京を拠点とするアーティストです。多くの広島出身者と同様に、「ヒロシマ」の歴史を次世代に継承していくことを重要なことだと考えている半田は、広島に原爆が投下されてから今までに経過した時間と、広島を訪れることの意義に焦点を当てます。特に、本展で初めて発表される新作の一つでは、半田は「匂い」を作品の素材として使うことに挑みます。半田が展示会場でお香を焚くことで発生する匂いは、来場者の身体や衣服に付着して「持ち帰られる」こととなります。この匂いは、かつて原爆の投下直後に広島にもたらされた残留放射線を暗喩すると同時に、来場者がここ広島で見たことを「持ち帰り」、その香りを嗅いだときにそれぞれの土地で未来の平和に思いを馳せて欲しいという祈りを込めています。

伊東慧は日本生まれのアーティストで、アメリカ東海岸エリアを拠点に放射線、記憶、生死といった「目に見えないものを可視化する」ことをテーマに活動しています。祖父が広島で被爆している被爆三世であると同時に、米国移民一世でもある伊東は、アメリカでの核実験による放射性降下物にさらされた被害者であるダウン・ウィンダーに着目しており、そこには放射線の目に見えない恐ろしさを知らずに実験に参加した作業員も含まれます。伊東の作品は、歴史の影に隠れている「アメリカの被爆者」の存在を浮かび上がらせるのです。

山本れいらは広島出身の母親を持ち、アメリカで高等教育を受けた日本人アーティストで、社会的な権力の存在に焦点を当てて作品を制作しています。山本の「After the Quake」シリーズは戦後の日米関係を原子力の視点から考察したもので、日本とアメリカの蜜月は原爆投下から始まり、原子力発電技術の輸入により維持され、そして福島第一原子力発電所事故に繋がっていくと言える、この一連の流れを描き出しています。山本の作品に描かれる「Postwar is Over(戦後は終わった)」というフレーズは、こうした日米関係の戦後体制を今、改めて見つめ直そうというものですが、同時に広島という土地においては、「世界から全ての原子爆弾がなくなるまで、広島の戦後は終わらない」という広島の思いに呼応する意義も持ちうると言えます。

展覧会のタイトル「Take it home, for (__) Shall Not Repeat the Error.」は、広島の原爆死没者慰霊碑の碑文「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」を英語訳したものに由来しています。日本語の原文では主語が省略されていますが、現在、正式に用いられている訳文が「Let all the souls here rest in peace; for we shall not repeat the evil. 」となっているように、主語は「私たち(We)」であり、そしてそれは広島や日本の人々だけでなく人類全体をも指すものだとされています。世界中の人々が広島を訪れ、歴史を学び、それぞれの土地に持ち帰っていく。そして「私たち」それぞれが二度と過ちの繰り返されない平和な未来を築いていくことこそが、「誰か」の過ちではなく「私たち」人類全ての過ちを引き受けたヒロシマの祈りなのです。そして本展は、そうした祈りを広島の中だけに留まらせないための挑戦でもあるのです。


《参考画像》

シクステ・カキンダ
コンゴ民主共和国出身。アフリカ出身アーティストとして最初の東京藝術大学大学院修士課程修了者であり、修了制作作品である「Intimate Moments/Monologue」は、同大学の卒業・修了買上賞を受賞した。2023年、同大学より博士号を取得。2020年に広島で初個展「Intimate Moments」(gallery G)を開催。日本人アーティスト鈴木ヒラクによる「Drawing Tubeプロジェクト」(2020年)への参加や、抜粋版がWords Without Bordersによって出版されたコンゴ人作家シンゾ・アアンザとの共同制作によるコミック『Men and Beasts』(2017年)など、その活動は多岐にわたる。ドローイングを他の芸術分野に拡張する可能性を探るため、Expanding Drawing Labを主宰している。

伊東 慧
日本生まれ、アメリカ・東海岸エリアを拠点とする。主にカメラを用いない写真やインスタレーションアートを制作する。2014年、ロチェスター工科大学卒業。2016年、メリーランド芸術大学大学院修士課程修了。現在、ニューヨークのInternational Center of Photography (ICP)で教鞭を執る。作品の主な収蔵先に、現代写真美術館(シカゴ)、ノートン美術館(フロリダ)、マーバ&ジョン・ウォーノックA-I-Rコミッティー、En Foco、カリフォルニア・インスティテュート・オブ・インテグラル・スタディーズなど。

山本 れいら
1995年、東京都生まれ。高校から大学にかけてアメリカ留学を経験し、シカゴ美術館附属美術大学でアートを学ぶ。アメリカを知る日本人として、また一人の日本人女性としての視点から「日本とは何か」を問う作品を制作する。主な作品に戦後の日米関係を原子力「After the Quake」シリーズの他に、妊娠・出産で女性が引き受ける困難を表現した「Pregnant's autonomy」シリーズ、少女漫画・アニメを通した女性のエンパワメントと連帯を表明する「Who said it was simple?」シリーズなど。

半田 颯哉
1994年、静岡県生まれ、広島県出身。アーティスト・インディペンデントキュレーター。技術と社会的倫理の関係や、アジア人/日本人としてのアイデンティティを巡るプロジェクトを展開し、コマーシャルギャラリーや企業とのコラボレーションにより様々な展覧会をキュレーションしている。また、1980年代日本のビデオアートを対象とする研究者としての顔も持っている。東京芸術大学大学院修士課程および東京大学大学院修士課程修了。