Layla Yamamoto: After the Quake
18 - 30 Dec. 2021
15:00 - 20:00
1F, Fukushima Bldg., 1-5-3 Nihonbashimuromachi, Chuo-ku, Tokyo
18 - 30 Dec. 2021
15:00 - 20:00
1F, Fukushima Bldg., 1-5-3 Nihonbashimuromachi, Chuo-ku, Tokyo
A rain of ruin, 2019
22x27.3cm
pastel, collage on a canvas board
平和の定義 (Definition of peace), 2019
22x27.3cm
pastel, collage on a canvas board
《A rain of ruin》は原爆投下を報じる新聞記事の、《平和の定義》は第34代アメリカ大統領、アイゼンハワーの演説「Atoms for Peace」を記念した切手のイメージを転写した上にきのこ雲を描いたドローイングである。
2011年、東日本大震災を契機に日本社会が変容したのを感じ取った山本は、変容前の姿としての日本の戦後を起点とすることで震災以後の日本社会の姿をより深く描き出すことに挑む。「Atoms for Peace」(平和のための原子力)は、戦後アメリカが技術輸出のため原子力の平和的有効性をアピールするために用いた標語であるとともに、冷戦体制下で西側諸国の「最前線」に原子力を配置し、自国の優位性を保とうとした政治的プロパガンダとしての背景も伺える。「戦後」は日本への原爆投下によって始まり、原子力発電によって維持されてきたのではないか。それが本シリーズの出発点である。
The latest news, 2019
22x27.3cm
pastel, collage on a canvas board
東日本大震災発生時の福島原発のニュース画像の上に波のドローイング。
birthday(blue), 2017
41x31.8cm
Acrylic paints on canvas
福島原発の水蒸気爆発のイメージが描かれている。
青を覗く (Look into the blue), 2017
41x31.8cm
Acrylic paints on canvas
because you want it (Postwar is over), 2019
53x45.5cm
Acrylic paints on canvas
even you want it (Postwar is over), 2018
53x45.5cm
Acrylic paints on canvas
therefore I want it (Postwar is over), 2019
53x45.5cm
Acrylic paints on canvas
オノ・ヨーコ、ジョン・レノンの《WAR IS OVER.》を参照しつつ、「戦後は終わった」と呼び掛けている。日本の戦後体制が原子力発電によって維持されていたのだとしたら、2011年の原発事故によって戦後体制は終えることができたはずである。しかし、そうした背景とは裏腹に、(「トモダチ作戦」を含め)日米関係は強化され、社会的には右傾化し、そして東京五輪を終え大阪万博が待ち構えているという、まるで戦後を改めてやり直そうとしているかのような状況が生じている。経済体制も社会構造も異なる今は、「もはや戦後ではない」。《WAR IS OVER.》のとき、まだベトナム戦争時は終わっておらずだからこそ「戦争はもう終わろう」という希望が込められていたように、これからの次の日本社会を作り出していくため、「戦後はもう終わろう」というアーティストの願いが「POSTWAR IS OVER.」というフレーズには込められている。
I don't care, I'd rather sink, 2019
53x45.5cm
Acrylic paints on canvas
津波の中で溺れているにも拘わらず、安らかな顔をして眠っている子供が描かれている。子供の姿は未来や自由を象徴するが、同時に自立していない、責任主体を持たない存在でもある。本シリーズの中で子供の存在は、(マッカーサーの「日本人はまるで12歳の子供のようである」といった言葉にもあるように)アメリカという大きな力に対して主体を持てない日本自身を象徴している。また、子供の安らかな姿は、社会的・政治的構造がもたらす大きな波に対して、たとえ苦しくとも足掻き、抵抗しようとするのではなく、寧ろ早々と抵抗を諦め、眠っている間に苦しまないように死にたい日本社会の姿も反映されている。
キノコ雲と波 (Mushroom Cloud and Wave), 2017
100x80.3cm
Acrylic paints on canvas
キノコ雲、津波、子供の顔……本シリーズを象徴するモチーフが重ね合わさりつつも、国際的に「日本のアート」のイメージを強く持つ葛飾北斎の波、戦後日本の文化を再構築した村上隆の「タイムボカンシリーズ」や、敗戦後の日本から生まれた具体美術協会の吉原治良の円相といった要素の引用も伺える。
繰り返し押し寄せる波に (The Wave Surging Repeatedly), 2017
162x130cm
Acrylic paints on canvas
葛飾北斎《上町祭屋台天井絵》の波浪表現を援用しつつ、北斎の影響を受けたロイ・リキテンシュタイン《溺れる女》の構図で波に飲まれる子供の顔が描かれている。吹き出し中の英文はW.B.イェイツの詩、《The Second Coming(再生)》より引用。日本語文はアーティストによる。
原子力のジレンマを解決し (Solve the fearful atomic dilemma), 2018
162x130cm
Acrylic paints on canvas
ロイ・リキテンシュタイン《爆発》を参照しつつ、爆炎の中に子供の顔が描かれている。吹き出し中の英文はWilfred Owenの詩、《insensibility》より引用。日本語文はアイゼンハワー大統領の演説、「Atoms for Peace」の日本語訳より。
birthday(red), 2017
41x31.8cm
Acrylic paints on canvas
アメリカ最初の原爆実験である「トリニティ実験」のイメージ。数字は実験が行われた日付。
ロスアラモスの女の子 (A girl in Los Alamos), 2019
30x30cm
Acrylic paints on canvas
原爆開発を行っていたロスアラモス研究所内部で買い物をしている母娘の写真のうち、娘の姿を引用している。
Glory for peace, 2019
100x72.7cm
Acrylic paints on canvas
ビキニ環礁での原爆実験・クロスロード作戦後にお祝いで作られた原爆ケーキの写真の上に、アメリカ最初期の国旗(Old Glory)が描かれている。国旗が縦向きなのは、アメリカ保守地域の掲揚方法に倣っている。また国旗をモチーフとするところには、ジャスパー・ジョーンズの作品への参照も見える。
American flag on a document of Trinity, 2019
22x27.3cm
pastel, collage on a canvas board
トリニティ実験を報じる記事のイメージの上にアメリカ国旗のドローイングが描かれている。
8月の子供 (A child in August), 2019
27.3x22cm
pastel, collage on a canvas board
広島に原爆を投下した戦闘機(エノラ・ゲイ)の写真に、日本人の少女が描かれている。綺麗な洋服を着ており豊かさを感じさせるロスアラモスの少女との対比に、戦時中の日米の国力の差が垣間見える。
赤条と日章 (red stripes and sunburst), 2018
53x53cm
Acrylic paints on canvas
戦前、放射状だった線は、戦後、アメリカとの関係によって赤条=赤い横線となった。
赤を覗く (Look into the red), 2017
41x31.8cm
Acrylic paints on canvas
第二の故郷 (the second home), 2018
45.5x53cm
Acrylic paints on canvas
山本にとってアメリカという国は、母国・日本との間に大きな権力構造を持つ国である一方で、多くの人々と出会い、自身が受容されたと感じられた土地でもある。そんなアーティストにとっての「第二の故郷」に対する、アンビバレントな気持ちが表現されている。